今、君は僕の前から居なくなった…。
あのはにかんだ笑顔も、白く綺麗な肌も二度と見れないだろう…。
君が居なくなったこの場所で僕は君との思い出を思いだしている。
君が一人の人間だったころの事を…。

最初の出会いは高校の時だった。
桜の花吹雪の中を歩いている君が凄く神秘的で綺麗だった。
始業式の後、クラスが一緒だと言うことを知って嬉しかった。
委員会も一緒になった。
その時に凄く仲良くなって、それからと言うものいつも一緒に居た。
1年の時の文化祭、二人で回ったんだ。
二人だけで回れた文化祭はあれ一度きりだった。
3年生の自主制作映画、物語は墜ちて人間になった天使の女と一人の男の物語。
最後まで見る前に君は「他を見に行こ?」って言ってきて、だからしょうがなく別の見学先を見に行ったんだ。
僕は結構見たかったんだよ?でも、君が他を見に行こうとした意味が分かったから今は何も言わないよ。
友達が開いたクリスマスパーティー。二人で買い出しに行った。
あの時、僕が君に気持ちを打ち明けて、付き合いが始まった。
後々、君に「あの時あなたが言わなかったら私が言ってたかも」って言われて、最初から両思いだったんだって少し嬉しかった。
元旦に行った初詣。
あまりの人の多さにはぐれたんだ。
僕がおみくじを引いてる間に君は人の波に飲み込まれちゃって…。
あの時は本当に心配したよ。鳥居の前で君を見つけた時、本当に嬉しくて思わず君を抱きしめたけど後から考えると恥ずかしいな。

そして、何度かのデートを重ねながら僕たちは二年に上がった。
何も変わらない毎日がお互いの気持ちを麻痺させたせいか付き合って初めての大げんかをしたのは二年の夏休みでの事。
君と会う約束をほったらかして友達と遊んでたことに君は怒って口も聞いてくれなくなった。最初は、自分のワガママに気付かず君が悪いと決め込んで謝らなかった。
でも、日を重ねるに連れて自分が悪い事に気付いてどうすれば仲直り出来るか考えて眠れなかった。
あんなに寂しい時間を過ごしたのは、君と付き合ってからでは初めてだった。
最終的には二週間も長引いて、花火大会の日に僕が渋る君を半ば無理矢理誘って謝った。一人じゃ寂しくてどうしようもなかったことも伝えた。
君も独りが寂しかったって言ってくれてそれで仲直りした。
二学期になると周りの友達がどんどん別れ始めた。僕らも勢いで別れちゃうんじゃないか?って思われてたらしいけど、僕らは平気だったよね。
そして、修学旅行の沖縄。
夜に二人ほぼ同じタイミングでメールしたんだよね「抜け出さない?」って。
そして、こっそりと二人ホテル抜け出して、近くの海に行ったんだ。
静寂の中に聞こえる海の音と空一面に浮かぶ満点の星があまりに綺麗で時が経つのも忘れてそこに居たよね。
あまりにムードが良すぎるから、少し手が触れるだけでもお互い意識しちゃって、普段なら平気なことでもかなり動揺してたよ。
いつまでも、あの星を見ていたかったね。あの星の下に君と二人で居ると他の誰のためでもない、二人のためだけに輝いてるように見えてしょうがなかった。

ゆっくりと時間が過ぎて僕らは3年に上がる。これが最後の時…。
夏休み君と3度目の花火大会。
散りゆく真夏の空の花びらを見上げながら君は何を思っていたのだろう…。
あの花火の色は一生忘れられないほど綺麗で…儚かった。
君の顔を見つめているとそれに気付いた君はふっとこっちは向き笑顔で
「キスでもしませんか?」
と僕に問いかけた。
何気ない学校生活も少しずつ色褪せてきた。いまじゃ就職だ進学だの話で持ちきりだ。就職試験の結果を待つ奴らと推薦の合格を期待する奴らその中に僕も居た。
君は何故か推薦を受けずに一般で行くと言っていた。
何故だろう?と思いつつも推薦より良い学校に行きたいのと言った君の言葉を信じてた。それが嘘だったとも知らずに…。
紅葉の季節、最後の文化祭も終わり寒さが増す。
君と歩いて来たこの道のこの季節も最後だ。
そんな事を君も考えていたのかな?君にとってはこの僕と過ごすこの季節が最後だったワケだし。僕より思いは大きかったんだろうね。
紅い葉が全て落ちうっすらと霜が降りて、寒さが増しイルミネーションが街を覆ったクリスマス。僕らは付き合って二年のお祝いをした。
君は家で料理を作って待っていた。
僕は君の家に行く途中別の駅に降りてプレゼント買って君の家に向かった。
少し遅刻したから君は頬を膨らませて家から出てきた。
君の作った料理を食べた後、ケーキが出てきた。
部屋の明かりを消し、ケーキに付いているロウソクに火を付けそれを見つめていた。
ゆらゆらと揺らめく炎の明かりに見とれていた。
「愛しているよ」
自然と出てきた。
君は涙を流しながら頷いた。
そっと触れた唇と唇。離れることなくお互いを感じていた。
色褪せない。
君との思い出の1ページ。まだまだ増えると思っていた…。
けど、そうじゃなかった。
2週間前…突然の電話。
雪が降る中、君の元へ僕は向かった。
君の家に着く。君はとても悲しそうな目をして出てくると
「ちょっと散歩しよ?」
と言って公園に向かった。
そこで僕は聞いた。
…君がもうすぐ居なくなってしまうことを…。
天界で神の怒りに触れ人間に変えられてこの世界に堕ちてきた。
そして、その罪は3年で消える…。
もうすぐ3年…翼が生えて君は元の天界に帰る。
しかし、君は3年の間に僕と出会ってしまった…。
そして、いつのまにか君は僕のことを愛してしまった。
愛してしまったから逆に言いづらかった。
僕は最初信じられなかった。
何度も、冗談だろ?と聞き返していた。
そのたびに君は涙を流しながら僕に謝っていた。
冗談じゃないことを悟り、僕は君を抱きしめた。
行かないでくれと何度も呟いた…。
そして、僕は肩を落として家に帰った。
2週間…君からの連絡はなく、僕も君に連絡しなかった…。
今日の夜になって君からメールが届いた。
−明日の0時…私は天界に帰ります。今まで有り難う…そしてさよなら。
僕はメール見て我に返った。
−いつまでも落胆してる場合じゃない!
そう思うと急いで僕は家を飛び出した。
何も考えずただ君の下へと急いだ。
23:56:00
時計がその時間を示した頃…僕は君を見つけた
小さな公園の灯りに君は照らされていた。
僕は君に声をかけた。
その声に気づき君は振り返る。
僕が立っているのを見ると涙を流した。
僕は君に近寄り、君の左手の薬指に銀の指輪を付けた。
君は泣きながらその指輪を見つめていた。
君は言った。
「必ずまた…あなたの下へ戻ってくるから。」
僕は言った。
「ずっと君が来るのを待ってるから。」
僕は君を抱きしめ、そっと唇に唇を重ねた。
0:00:00
時計の針が0時を指した。
君からそっと僕は離れる…。
君の背中には羽根が生えていた。
君は空に舞った。
天から光が出でて彼女は照らされていた。
「愛しています。あなたの事をいつまでも…いつまでも…」
君はそう言うと天に帰っていった。
僕は膝から泣き崩れた。
空からは暖かい雪が降っていた…。
…5年後。
彼は大学を卒業し社会人として人生を歩んでいた。
ある朝、いつもの様にアパートから出てくると、空から白い羽根が舞い落ちてきた。
彼はそれを手に取り空を見上げた…。
薄い青の色した冬の空が彼を見下ろしていた。
ふと、あの約束を思い出す…。
彼は微笑むと会社へと出かけた…。
−必ずまた…あなたの下へ帰ってくるから…





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