Bell river

桐嶋 瑠衣さま作



静寂を纏う森の中。
風が、木々を揺らし、葉が音を立てる。
木漏れ日が消え、そして、現れる。

その中に、私と凛はいた。

凛は、私の友達で。

私たちが此処にいるのは、
学校中で騒ぎになっている一つの噂から。

『この森には、妖精の住む、小さな川が流れている。
 妖精は小さく、淡く光を放ち、ふわりと浮いている。』

まとめると、こんな感じだった。

別に、妖精なんて信じてないけど。

新聞部の部員としては、見逃すわけにもいかなくて。

そんなわけで、私と凛は、森を歩いていた。

吹き抜ける風は冷たく、少し、寒気がするほどだった。



どれだけ歩いたか。

何処まで行っても、妖精なんていなかった。
それどころか、小さな川すらも見つからない。

上を見上げると、
そこにはちょうど木々の枝が無く、
空を、見上げることが出来た。

見上げた空は、赤く、染まっていた。

「もう、諦めて帰らない?」

凛の意見に、反対の意思はなかった。

こうして、私たちは、もと来た道を帰りだした。

一向に見えてこない、森の出口を目指して。



「迷った、ね・・・」

そう、私が言うと、凛は小さく頷き、言った。

「どうしよっか。」

聞かれても、どうしようもなかった。

「歩く、しかないよ。」

それ以外、答えようがなかった。

「そうだね・・・」

それっきり、私たちは黙々と歩いていた。



気付けば。
其処は、さっき来た場所だった。
空を見上げることが出来る、あの場所。

私たちは、其処に腰を下ろした。

足が酷く痛く、疲れに逆らうことなど出来なかったから。

そのまま。
私たちは、空を静かに見上げていた。

見上げた空は、暗く。
淡く輝く、月を抱えていた。

辺りは、黒く、白く。

幻想的。

此の三文字がぴったりだった。

ちりん。

不意に、森の中に響く、多分、鈴と思われる音が響く。

刹那、

「妖精・・・」

突然と、凛が言葉を漏らす。

「妖精なんていないじゃない・・・」

私は、空から視線を下げ。

と、

「いた。」

思わず、言葉が漏れた。

それは、

小さく、淡く光を放ち、ふわりと、浮いていた。

そしてそのまま、森の更に奥へと、入っていった。

私たちは立ち上がると、
そっと、妖精についていった。

其処には、確かにさっきまでなかったモノがあった。

小さな、川。

忽然と現れたその川は、月に照らされ、水面を輝かせていた。

それは、只、綺麗だった。

ちりん。

鈴の音は、尚も続く。

その音に従い、川は伸び、妖精は川を伝い。

私たちには、追うことしか、出来なかった。



しばらくすると、鈴の音は止んだ。

と、同時に、

川の流れは止み、
妖精も、その場に漂った。

そして、其処には、少年の姿があった。

少年は、どうやら迷子らしかった。

一人、泣きつづけ、その場に座っていた。

と、少年の顔の前に、妖精は姿を現した。

そのまま、何も言わずに、漂うと。
今度は、森の何処かへと、向かっていった。

少年がその後を追い、私たちも、追う。

その間、森はやけに静かだった。



気付けば、其処は森の入り口だった。

そして、

妖精は、何処にもいなかった。

何処かへと、消えていた。

私たちは、何もなかったように、そのまま家へと帰っていった。



翌日。

新聞部の号外新聞に書かれた記事の一つに、

『妖精の噂の真相。』

という、見出しがあった。

内容は、

『新聞部の調査結果によると、
 あの森に妖精がいるという噂は、
 全くもっての嘘であり、
 妖精どころか、川一つなかった。』

とのことだった。

勿論、調査員の所に、私と凛の名前と共に。



昨夜、
家に向かっていた私たちは、
今日の出来事を記事にして明日持っていく。
という約束をもとに、それぞれの帰路へと着いた。

そして、今朝。

二人が持ってきた記事には、
妖精がいた、という真実は書かれておらず、
妖精はいない、という偽の真相が書かれていた。

私と凛は、後悔などしていなかった。

たとえ、偽の真相だとしても。
それは、本当の真相を知るよりも、
遥かにいい事がある。

と、思うからだ。

こうして、この噂の真相は、
私と、凛の中だけに、埋もれていった。



でも、この話はこれで終わりではない。

あの、少年の話。

二人が帰った後の事。



少年は、淡く光を放ち、こう言った。

「人間のフリをするのも疲れるね。」

と、小さな体で、ふわりと浮いて。
それは、もう、少年の姿ではないが。

「そうかもね。」

先の妖精が言う。

そして、森の中へ。

二つの光は、消えていった。



この森の中には、未だにあの川は存在する。

そして、妖精も。

人々が、迷いやすいこの森で。

そっと、妖精は現れる。

今夜も、月と共に。

ちりん。

鈴の音が響くその川。

その川は、

『Bell river』

なんて。

呼ばれてたり、呼ばれてなかったりする。

という話だった・・・。





かのか談

瑠衣さま!!ありがとうございます!!!!
かのか感激です!
わわわわたくしのサイト名のしょ、小説なんてっっ!!

素敵で神秘的ですvv
情景描写がすごく上手だと思います!!だからすっごく神秘的な感じが出ていると思うのです!!
わァ〜〜私も森ん中迷いたいなァ
「うお!?これが噂のベルリバーかっ!!」
とネ
うふふふvvvすっごく嬉しいです!!!!
やはし、瑠衣さまの作品は読みやすいですネ!!
本当に有難うございました!!!!とぉ〜〜〜っても嬉しかったです!!!!





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