Bell river
桐嶋 瑠衣さま作
静寂を纏う森の中。
風が、木々を揺らし、葉が音を立てる。
木漏れ日が消え、そして、現れる。
その中に、私と凛はいた。
凛は、私の友達で。
私たちが此処にいるのは、
学校中で騒ぎになっている一つの噂から。
『この森には、妖精の住む、小さな川が流れている。
妖精は小さく、淡く光を放ち、ふわりと浮いている。』
まとめると、こんな感じだった。
別に、妖精なんて信じてないけど。
新聞部の部員としては、見逃すわけにもいかなくて。
そんなわけで、私と凛は、森を歩いていた。
吹き抜ける風は冷たく、少し、寒気がするほどだった。
*
どれだけ歩いたか。
何処まで行っても、妖精なんていなかった。
それどころか、小さな川すらも見つからない。
上を見上げると、
そこにはちょうど木々の枝が無く、
空を、見上げることが出来た。
見上げた空は、赤く、染まっていた。
「もう、諦めて帰らない?」
凛の意見に、反対の意思はなかった。
こうして、私たちは、もと来た道を帰りだした。
一向に見えてこない、森の出口を目指して。
*
「迷った、ね・・・」
そう、私が言うと、凛は小さく頷き、言った。
「どうしよっか。」
聞かれても、どうしようもなかった。
「歩く、しかないよ。」
それ以外、答えようがなかった。
「そうだね・・・」
それっきり、私たちは黙々と歩いていた。
*
気付けば。
其処は、さっき来た場所だった。
空を見上げることが出来る、あの場所。
私たちは、其処に腰を下ろした。
足が酷く痛く、疲れに逆らうことなど出来なかったから。
そのまま。
私たちは、空を静かに見上げていた。
見上げた空は、暗く。
淡く輝く、月を抱えていた。
辺りは、黒く、白く。
幻想的。
此の三文字がぴったりだった。
ちりん。
不意に、森の中に響く、多分、鈴と思われる音が響く。
刹那、
「妖精・・・」
突然と、凛が言葉を漏らす。
「妖精なんていないじゃない・・・」
私は、空から視線を下げ。
と、
「いた。」
思わず、言葉が漏れた。
それは、
小さく、淡く光を放ち、ふわりと、浮いていた。
そしてそのまま、森の更に奥へと、入っていった。
私たちは立ち上がると、
そっと、妖精についていった。
其処には、確かにさっきまでなかったモノがあった。
小さな、川。
忽然と現れたその川は、月に照らされ、水面を輝かせていた。
それは、只、綺麗だった。
ちりん。
鈴の音は、尚も続く。
その音に従い、川は伸び、妖精は川を伝い。
私たちには、追うことしか、出来なかった。
*
しばらくすると、鈴の音は止んだ。
と、同時に、
川の流れは止み、
妖精も、その場に漂った。
そして、其処には、少年の姿があった。
少年は、どうやら迷子らしかった。
一人、泣きつづけ、その場に座っていた。
と、少年の顔の前に、妖精は姿を現した。
そのまま、何も言わずに、漂うと。
今度は、森の何処かへと、向かっていった。
少年がその後を追い、私たちも、追う。
その間、森はやけに静かだった。
*
気付けば、其処は森の入り口だった。
そして、
妖精は、何処にもいなかった。
何処かへと、消えていた。
私たちは、何もなかったように、そのまま家へと帰っていった。
*
翌日。
新聞部の号外新聞に書かれた記事の一つに、
『妖精の噂の真相。』
という、見出しがあった。
内容は、
『新聞部の調査結果によると、
あの森に妖精がいるという噂は、
全くもっての嘘であり、
妖精どころか、川一つなかった。』
とのことだった。
勿論、調査員の所に、私と凛の名前と共に。
*
昨夜、
家に向かっていた私たちは、
今日の出来事を記事にして明日持っていく。
という約束をもとに、それぞれの帰路へと着いた。
そして、今朝。
二人が持ってきた記事には、
妖精がいた、という真実は書かれておらず、
妖精はいない、という偽の真相が書かれていた。
私と凛は、後悔などしていなかった。
たとえ、偽の真相だとしても。
それは、本当の真相を知るよりも、
遥かにいい事がある。
と、思うからだ。
こうして、この噂の真相は、
私と、凛の中だけに、埋もれていった。
*
でも、この話はこれで終わりではない。
あの、少年の話。
二人が帰った後の事。
*
少年は、淡く光を放ち、こう言った。
「人間のフリをするのも疲れるね。」
と、小さな体で、ふわりと浮いて。
それは、もう、少年の姿ではないが。
「そうかもね。」
先の妖精が言う。
そして、森の中へ。
二つの光は、消えていった。
*
この森の中には、未だにあの川は存在する。
そして、妖精も。
人々が、迷いやすいこの森で。
そっと、妖精は現れる。
今夜も、月と共に。
ちりん。
鈴の音が響くその川。
その川は、
『Bell river』
なんて。
呼ばれてたり、呼ばれてなかったりする。
という話だった・・・。
かのか談
瑠衣さま!!ありがとうございます!!!!
かのか感激です!
わわわわたくしのサイト名のしょ、小説なんてっっ!!
素敵で神秘的ですvv
情景描写がすごく上手だと思います!!だからすっごく神秘的な感じが出ていると思うのです!!
わァ〜〜私も森ん中迷いたいなァ
「うお!?これが噂のベルリバーかっ!!」
とネ
うふふふvvvすっごく嬉しいです!!!!
やはし、瑠衣さまの作品は読みやすいですネ!!
本当に有難うございました!!!!とぉ〜〜〜っても嬉しかったです!!!!
Back
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||